IT’S NOT CRICKET

フェアじゃないよ・・・イギリス生まれのスポーツとイディオム

It’s not cricket=「フェアじゃない」の意”

紳士のスポーツとして生まれた「クリケット」はフェアではなくてはならないことから生まれたイディオムである。

オリンピックで意外にも好成績のイギリス

オリンピックで活躍したイギリス選手というとすぐに名前が思いつかないのだが意外にもイギリスは毎回好成績を納めているらしく前大会においては、「ビッグ3」と呼ばれるアメリカ、ロシア、チャイナに次ぎ多くのメダルを獲得している。今回は多くの種目がイギリスで現在に至る形を整えたことに注目したい。そしてスポーツ生まれのイディオムが物語るものは何かを。

フルマラソンの距離、実はウィンザー城からロイヤルファミリーの観客席までの距離だった。

マラソンは1896年の第1回アテネオリンピックから行なわれているが、走行距離「42,195km=26マイル385ヤード」は4回目ロンドンオリンピックにおいて採用され、熱い論議の上8回目パリオリンピック以降フルマラソンの基準となった。24マイルはスタート地点のウィンザー城からホワイトシティスタジアムまでの距離で、2.2マイルは選手を迎えるロイヤルファミリーの観客席前までの距離だったとか。

部族の酋長を決めるための石の球投げだったハンマー投げ

ハンマー投げは約2000年前からブリテンにおいて石の球を用いて行なわれており、スコットランドでは西暦紀元前(BC)に部族の酋長を決めるための力較べとして行なわれていたと言う。中世になって人気を博し18世紀には鉄が石にとってかわりブリテン諸国で競技化したのち、イングランドがこのハンマーの重量とハンドルの長さを取り決めた。

懸賞金付レースが起源のヨット

ヨットはチャールズ2世とその弟ヨーク公のジェイムズが1661年テムズ河で行なった懸賞金付レースを起源とし、のちにヨットクラブが生まれ1875年に競技としての体制を整える。

雪道をグループ移動する手段だったボブスレー

ボブスレーは1890年にスイスで休暇中のイングランド人のグループが雪道を数人で移動する方法として発案したのが始まりだそうだ。

こんなにある、イギリス生まれのスポーツ

その他、ゴルフ・テニス・ラグビー・ボクシング・バドミントン・カヌー・ホッケー・ローイングと続く。スキーですらイギリス生れというから意外だ。ルール作りの大好きなイギリス人がゲーム作りに興じた別の形なのだろう。

クリケット、ジェントルマン精神が生んだ湾曲表現の面白さ

クリケットは日本人には馴染みが薄いが上流階級をテーマにした映画によく登場するように、イングランドのパブリックスクールから発展したスポーツである。オリンピック種目とするには競技時間が長すぎるため(丸一日、または数日かかることも)一度しか加わったことが無い。世界100何十カ国で競技されており、特にインドにおいて圧倒的人気があるためクリケット人口はフットボールに次ぐと言われている。パブリックスクール発祥だけにgentleman(ジェントルマン)精神を礎としてfair play(フェアプレイ)に対しては非常に厳しい。It’s not cricketというイディオムは「フェアじゃない」ことを指して言うくらいだ。試合に及んで批判がましいことを口にしたり、審判員に盾突くなどは選手も観客も絶対に許されないことである。しかるにその表現はeuphemisms(湾曲)したものになっており、審判員の判定が間違いだという時に「It’s wrong」などとは言わず「The decision was very close」などと言い、それがかなりひどい間違いであった時は「The decision was extremely close」と言う。また、下手なショットは「poor shot」と言わず、「fairly ordinary shot」
だが、クリケットが世界的なスポーツになりスポンサーがついて勝ち負けへの執着が強くなるとgentleman精神が希薄になることを嘆く人々も多い。これは日本の相撲に海外の力士が入り込んできたためとして「品格」の低下を憂う声と似ている。相撲はスポーツか伝統かと言われれば伝統の域を出ない。クリケットは世界中で競技されているスポーツであり、いまや負けても失うものが無いからgentleman然としていられるprivilege(特権階級)だけのものではないが、「潔い人」のことをa good sportと呼ぶように美しく負ける術を心得ていることは選手に限らず観る側にも要求されるスポーツ精神なのである。

多くのスポーツにはhandicap(ハンディキャップ)=実力や体格の不均衡を公平にする条件が課される。これは1650年にイングランドで行なわれていた「賭け」が始まり。hand in cap=「帽子の中に手を入れて」掛け金を隠し金額の少ない者も勝負に挑めるという配慮に始まり、のちに競馬で強い馬におもりを課し「条件を均等にする」意味で採用され、その後各種スポーツで用いられるようになった。

さて、ここにスポーツから生まれたイディオムを少しばかり紹介しておくので使ってみてはどうだろう。

Don’t be late.  You have to toe the line like everybody else. 遅刻するな。皆と同様ルールに従え。
* toe the line = 長短距離走等で「スタートラインにつく=ルールに従う」が語源。

Let me get it, you bought the last round.
今度はボクが(ビールを)買うよ。さっきは君が買ってくれただろ。
Very sporting of you.
ありがとう。(ご親切に)
* sporting of you = ご親切に。(相手のフェアな気遣いに感謝の意を込めて言う言葉)

It takes years to become a doctor.  Don’t get stuck at the first hurdle, you must go the distance.
医者になるには年月がかかるんだ。最初の難関(ハードル)でしくじるなよ、そして最後までやりぬけ。
* stuck at the first hurdle = 最初の難関でしくじる。
* go the distance = 最後まで行く。

It’s not a level playing field for foreign companies in China.
中国にいる外国企業には公平じゃないよ。
* level the field = (環境を同等にして)公平に行く。

You can’t change the deadline now!  You’re moving the goal posts!
今頃締切を変更するなんて。不公平だよ。
*Moving the goal posts = 不公平なことをする。(自分の有利になるようゴールを動かすような行為)

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