UK 2012 BEHIND THE EVENTS

イベントの陰で「オリンピック&ダイアモンドジュビリー」

ロンドンオリンピック 7月27日~8月12日

2005年、ロンドン招聘委員会は見事なプレゼンテーションで本命のパリを大逆転、招聘地獲得に成功した。ならば足並揃えてイギリスが獲得するメダルの数に注目したいところだがそう容易にいかないのがこの連合王国の複雑さである。

以前、「ABE=Anyone But England/ユニオンジャックの行方は?」というタイトルでイングランドと(ことに)スコットランドの精神的敵対関係についてのコラムを書いたことがある。その敵対心がオリンピックに際してイギリス人が三度の飯より好きな揉め事の種、フットボールによって再燃したのだ。

イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4つの国々はそれぞれのフットボール協会に属しており、ワールドカップやユーロなどの大会には独立した国として参加する。だがオリンピックにおいては「チームGB」として他の競技同様4つの国が一つのユニフォームを着なければならない。そこへイングランドを除く各国の協会から反発が相次ぎ、自国の選手に参加を禁じたのだ。

そもそも大金が動くプロのフットボールがオリンピックにふさわしい競技ではないという声は常にある。選手やマネージャー達にとってもオリンピック前に行なわれる強豪揃いのユーロ2012や毎週のように死闘が繰り広げられる所属リーグの方がずっと重要なのだが、自分の島が舞台とあっては参加に心傾く選手は多い。結局イングランド協会がチームをまとめ他3カ国からは希望者が参加するようだ。

各競技のチケットが完売と伝えられる中、今だに残っているのがフットボール競技のみということからもわかるように、ファンでさえオリンピックには関心が薄い。それならお祭り気分でユニオンジャックを身につければいいと思うのだがそれはファンの国民感情が許さないらしい。オリンピック参加を希望するウェールズのBaleとRamseyの参加希望表明に非難が相次いだ。
招聘地選考時、ロンドンの委員会がアピールした「ロンドン貧困地区の開発」の予定通り競技場はイーストエンドに建設され、その近くにはWestfieldというヨーロッパ最大規模のフラッグショップがオープン、新しい路線も開通した。これまで誰も手をつけなかった最後のロンドンがオリンピックの力によって大きく生まれ変わりつつある。だが、これらは「UKマネー」という税金を使いイングランドにもたらされる恩恵であり、他国にとって何の得があろうというもの。イングランド以外の国々が常に持ち続ける不公平感はさらに高まるばかり。チームGBのフットボールキット(ユニフォーム)を見るのはこれが最後かもしれない。

エリザベス二世・ダイアモンドジュビリー 6月2日~6月5日

オリンピックに先立ち、エリザベス女王戴冠60周年「ダイアモンドジュビリー」が行われる。大英帝国時代のヴィクトリア女王は在位64年、逝去時81歳だったがエリザベス女王はすでにその年齢を上回り今年86歳にして迎える60周年だ。6月3日にはテムズ河を1,000艘もの船が横断すると言う。七つの海を支配した海軍国らしい演出である。

今から35年前、戴冠25周年を祝うシルバージュビリーが行なわれた1977年のイギリスは「仕事が無い、希望が無い」そんな時代が生んだPUNK旋風の真っ只中。仕事も希望も無いのは現在同様だが、若者達はずっと貧しく荒廃していた。
PUNKバンドのセックスピストルズは祝典に時期を合わせて国歌を揶揄った同名の曲「GOD SAVE THE QUEEN」をリリース、女王の肖像をレコードジャケットに使用しただけでもショッキングだったが、その上、祝典期間中に許可なくテムズ河の船上横断ライブを行ったのである。警官が押しかけ、バンドメンバー他同行したPUNKの仕掛人マルカム・マクラレン、のちにイギリスを代表するファッションデザイナーとなるヴィヴィアン・ウェストウッドなどが逮捕された。しかしこの曲はBBCが放送を禁止するなどしたにも関わらずイギリスのチャートの1位を獲得したのである。

God save the queen,
Cause tourists are money,
And our figurehead is not what she seems
神は女王を救い給う
観光客は金だからさ
女王は看板のようにふるまっちゃいるが本当のところは何者かわからない

セント・ポールズ大聖堂が抗議デモによって占拠されるという事態が起きたのは昨年末のこと。大イベントを控えながらイギリスの経済に回復の兆しはない。それでもこの国が、イギリスのみならずカナダやオーストラリアを始めとするイギリス連邦16カ国の女王でもあるエリザベス2世を看板とし、王室の威光を放つことによって観光客を呼び寄せている事実に今も昔も変わりはない。

 

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