愛着の100冊
イギリスで行なわれた「愛読書投票」で、ジェーン・オースティンの「Pride and Prejudice/自負と偏見」がトップ、JRRトールキンの「The Lord of the Rings/指輪物語」が2位、「Jane Eyre/ジェイン・エア」が3位という結果が発表された。リストはトップ100冊まで及ぶ。10年前のBBCによるトップ100投票ではこの1位と2位が逆だったそうで、この2冊の根強い人気を物語っている。統計の男女比はわからないが、女性が「Pride~」を、男性が「The Lord of~」を指示しているのではないかと推測する。
「Pride and Prejudice」は北アイルランドを除く各地方で1位というからまさに国民的愛読書と言ったところだろうか。これまでに何度も映画化されており、古くはシェイクスピア俳優、ローレンス・オリビエ主演の1940年版、新しいところではキーラ・ナイトレイ主演の2005年版などがあるが、おそらく最も人気の高いのがコリンファース主演の1980年TV版と言っていいだろう。そして「Bridget Jones’ diary/ブリジット・ジョーンズの日記」はこれを元に書かれた「現代版Pride and Prejudice」だということはよく知られているが、これをきっかけとして原作を手にした人も多いに違いない。
4位には「Harry Potter/ハリーポッター」とイギリス勢が続き、5位にアメリカ南部を舞台に人種差別を描いたハーパー・リーの名作、映画ではグレゴリ-・ペックが主演し多くの人の涙を誘った「To Kill a Mockingbird/アラバマ物語」が入ってくる。これが北アイルランドでトップとなった作品だ。
トップ100の上位には、ディケンズ、ブロンテ姉妹、ジョージ・オーウェル、シェイクスピア、トマス・ハーディなどの英文学を代表する作家陣の作品群に加え、サリンジャーの「Catcher in the Rye/ライ麦畑でつかまえて」(18位)、トルストイの「War and Peace/戦争と平和」(24位)、ドフトエスキィの「Crime and Punishment/罪と罰」(27位)などの世界の作家も顔を出す。
オースティンの「Pride and Prejudice」は、日本で言えば寛政という、江戸時代は11代目将軍、徳川家斉の時代に書かれたものであり、オースティンと入れ代わりに文壇に登場するブロンテ姉妹やディケンズなどのヴィクトリア朝の作家は、実在の?遠山の金さんが威勢良く啖呵を切っていたらしい時代の人たちなのである。14位の「Complete Works of Shakespeare/シェイクスピア全集」ともなるとさらに時はさかのぼり、当時の日本は安土桃山時代。英語を国語とする者なら誰にでも理解できるとは言えない古典が今も人々を魅了し続けているという事実には、時代の移り変わりに媚びない読書の地位が確立されていることがうかがえる。
そもそも、世の中の全ての物語の筋は7つに分けられるという説があるほど書き手は似たり寄ったりの筋を手を変え品を変え書き続けているわけだが、何によって魅せられるかは作家によるthe way it’s written いわゆる書き方における芸術性で、言葉はこうやって使うものというその妙味を読者は評価しているのである。
さて、エイトリアムの講師陣たちも本の読み回しには熱心で休み時間は意見交換で盛り上がる。常に新しい本を紹介してくれるPatのお気に入りはジョン・ファウルズの「The Magus/魔術師」。他のスタッフも口を揃えてgood bookという評判だ。Patが生徒に推薦したい本は、かつて大いに笑った思い出のあるギャビン・マクスウェルの「Ring of Bright Water/カワウソと暮らす」だそうだが日本では絶版。自ら多読・乱読を認めるSteveはウンベルト・エーコ、フィリップ・K・ディックらを好きな作家として挙げる。トールキン、オーウェルもはずせないと言う。毎朝本を片手に出勤するMickからはガルシア・マルケス、ドストエフスキィ、村上春樹などの名が挙がる。(あいにくJasonは旅行により不在。)
何でも映像化される時代だからあえて読みたい。さあ、あなたの愛読書は?