ブリティッシュ パブカルチャー
パブ(pub)の元々の呼称はpublic bar(大衆の酒場)である。publicというからには皆が気持ち良く酒や会話を楽しむための暗黙のルールが昔からイギリス人の間に生きているわけで、ビアだけで何時間もしゃべり続けられる社交の場としてイギリス人にはなくてはならないところなのである。
パブでの会話
通常パブにはウェイターがいない。自分でバーへ行ってドリンクを買ってくる。この「バーでドリンクを待つ時間」がパブらしい社交の場を生むのである。お望みのビアが手に入るまでの間、客同士が、また客とバーマンが会話を始める。天気のこと、ビールのこと、今日のパブの雰囲気など。
いきなりパーソナルな会話はしない
一般的にイギリス人はこの時点で、相手の名前を知りたいとも思わないし、どこから来たかも興味がなく、ごくありきたりの会話をする。お互いに「ふ?む、この相手には興味があるぞ」と思わない限りは。イギリス人はアメリカ人と違ってパブで会っただけの相手と「握手」など交わしたくはないし「自己紹介」もしない。普段から他人と気楽に言葉を交わす習慣のない日本人には「話を始めるタイミング」も難しければ「話をブレイクするタイミング」も難しいかもしれない。パブで会っただけの話したくもない相手と我慢して延々付き合った?というのはありがちな話で、馴れ馴れしくし過ぎず丁寧になり過ぎずの社交のさじ加減を心得ておきたいものである。
日本人はよく Why did you come to Japan? のような一言で答えられない質問をいきなり会ったばかりの人に対してしがちだがパーソナル過ぎるので要注意。How long have you been here? Where are you from? なども同様。今その場で起こっていること、見えること、聞こえることなどをヒントに短いやりとりから始めるのがコツだ。
バーエリアから離れてテーブルに座っている人は通常話し相手を求めてはいない。ドリンクを手にしてもまだバー付近にたむろしているpub go-er (パブに行くことの好きな人々)や locals(地域の常連たち)が、よそ者との会話に興味を示す態度は無言のうちに見て取れるはずだ。
buying roundsという習慣
イギリス人とビアを飲む時は、buying rounds of drinks in turnという習慣があるということを覚えておこう。グループのうちの一人が first round→ 全員の1回目のドリンクを買う。そして皆のグラスが4分の1くらいになったところで今度は他の誰かが It’s my round, what are you having ?と全員の2杯目を聞いて買ってくる。そうやって皆が代わる代わるドリンクを買ってくるのだ。次第にゆっくり飲む者と早く飲む者とがはっきりしてくる。アルコールをたくさん飲めない日本人や女性はオファーされたら I’m OK, thanks.と言ってゆっくり飲めばいいが、あるポイントが来たら誰かのグラスの中身が少なくなっているのを見て Let me get the next round. と言ってオファーするくらいのマナーは心得ておいてほしい。中にはこのbuying roundsの習慣を避けたがる者もいるが、皆は暗黙のうちにふところを気にする相手とフレンドシップを築くのは難しいと感じている。
大勢のグループでパブを訪れた際は全員でドリンクを買いにバーへ行かないこと。グループから一人か二人代表して買いに行けばいい。同じグループからの長い行列はバーマンをいらいらさせるだけだ。
Time, gentleman please!
夜も更けてチリンチリンと鐘が鳴るとラストオーダー。客たちは最後のドリンクを買いに再びバーへ向かう。20分くらい経って Time, gentleman please !の声が聞こえたらそれは=Go home ! の意味。とっとと消えよう。